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法制上の問題と金融機関の課題

現在、貸金業法が段階的に施行されているが、完全施行を控えて貸付総枠の制限をかけている貸金業者もすでに存在する。たとえば、年収700万円で300万円の借金を抱えている人が、利息等の支払を一度も滞納したことがないにもかかわらず、借入れができずに困っているとの相談が発生している。もっとも、年収が比較的多い人の場合には、相談窓口が充実していれば早急な解決につながり、年収が多い分、今後の家計も健全化しやすい。一方、前述のように100万円以下の債務で苦しむ方が増えているにもかかわらず、「セーフティネット貸付」の準備が間に合っていない。その結果、年収300万~400万円前後の人たちの行き場がなくなるとしたら本末転倒である。

貸金業法で総量規制を適用する意義や重要性を確認すると同時に、債務者の実情や特性を勘案し、そめ生活に寄り添ったセーフティネット貸付が準備されるべきである。貸金業法の制定・施行に加え、消費生活協同組合法(生協法)が改正され、2008年4月から組合員に対する生活資金の貸付が認められるようになった。貸付事業が法的に明確にされた点については大きな前進といえよう。半面、貸金業法に比べて規制内容が緩和されている面もあるとはいえ、貸金業に沿った規制も色濃く漂っている。いわば生協法の理念(相互扶助)と現実(規制内容)が乖離しているのである。

改正生協法については、貸金業者が貸金業法の規制を逃れるべく、あるいは暴力団員が資金源とすべぐ生協を設立して貸付事業を行うことを未然に防ぐ見地から、貸金業法と平仄を合わせて規制が強化された側面もある。これに伴い、“たすけあい”や相互扶助の見地からの貸付事業への参入要件が大変厳しくなっており、実質的に参入の道を阻んでいる。岩手県消費者信用生協のような信用生協のモデルの展開は事実上無理ではないか(むろん、改正生協法の規制内容を問わず、岩手県消費者信用生協のモデルは約20年という歴史とさまざまな試行錯誤があって成り立っており、簡単に追随できるものでないことはいうまでもない)。

組合員の”たすけあい”、互助の精神という昔の頼母子講にみられた理念を残しながら、なおかつ組合員に限らず社会に幅広く貢献してくのが生協本来の姿である。したがって、大規模で資金的にも余裕のある総合生協が生活者目線から貸付事業に立ち上がることが、多重債務問題や貧困の問題を打開していくうえでは望ましい。だが現実には、貸付事業のリスクとコストが経営に及ぼす影響が計り知れないとして、貸付原資の確保にメドが立っても逡巡・断念する生協が後を絶たない。そうであれば、国・自治体による助成や協働事業化、貸倒れリスクに対する国の保証などにより、健全な生協が安心して相互扶助に基づく貸付事業に参入できるよう道を開くのが筋であろう。